特集 在宅医療と患者急変(下)
第1回日本在宅救急研究会シンポジウム
2017-09-13
無用な警察介入をどう減らすべきか救命救急とリビングウィルの整合性も必要に

どこまで救急搬送をするのか多職種で真剣に考えるべき

看取り搬送という言葉がある。自宅で看取ろうとされていたが、ぎりぎりになってあわてた家族などが緊急搬送してしまう。結果、病院到着時には死亡している場合がある。

長尾クリニック院長の長尾和宏氏が在宅で診ていた95歳の男性の状態がおかしいと連絡がきた。30分ぐらい待っていてと返答したが、その後また家族から連絡が。近くの親戚が救急車を呼び、今搬送中だという内容だった。

救急車内で救命措置が行われたが反応せず、結局死亡到着となってしまった。実は事件はここからだ。病院側は看取り搬送となったため、警察に連絡。家族の事情聴取が始まる。午前3時までかかったことから、同じ90歳代の奥さんは過労で倒れてしまったという。

また病院医師から診断書を書けないから、かかりつけ医である長尾氏に「霊安室に遺体を安置してあるので、霊安室にきてくれないか」との連絡が入った。長尾氏はこれを霊安室往診と呼ぶが、結局医師法20条、21条を正しく理解していないために、その状況下では死亡診断書を病院医師が書けないと誤解し、結果長尾氏の負担となるのだという。

もちろん救急搬送をしなくていいということではなく、「患者の症状・状態において病院で適切な治療をすれば、十分延命することが可能な場合はいくらでもある」とする。

どこまで救急搬送をするのかというのは、多職種が真剣に考えなければならない問題だろうと長尾氏は語った。明らかに無用な救急搬送や無用な警察介入を減らすためには救急隊や警察も含めた意見交換と情報共有が不可欠なのだ。

その上で長尾氏は、本人の意思を開示したアドバンス・ケア・プランニングを徹底していくことが大切と述べた。その核となるのは、リビングウィルであり、患者本人が元気なうちに意志を書面として残しておくことを強調した。


延命と処置を拒む患者狭間で困惑する救急医たち

今回のシンポジウムで、多くの論議を呼んだのが救命救急とリビングウィルの整合性だった。

長尾氏の話が終了した後の質疑応答で、会場にいた救急医からは「リビングウィル、またはアドバンス・ケア・プランニングの質の担保を図っていくべきだろう」「救急搬送されてきた患者でも、1日人工呼吸器をつければまた自宅に帰れると説明しても『本人は延命措置を望んでいない』と治療を拒否される」などの意見が寄せられた。また登壇した救急医たち、座長となった救急医からも、「救急医としては、リカバリーできる状態であっても、治療を拒否される」との発言が重なった。まさに「延ばせる命」と「処置を拒む患者」の狭間で困惑する救急医たちの姿が浮き彫りとなった。

長尾氏は、「今後は、在宅医と救急医は医療面だけでなく、生命倫理、臨床倫理面でも深く連携し協働する必要がある」との考えを明らかにした。

(医療タイムス No.2315)

 

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