特集 住み慣れた街でいつまでも暮らす(3)
地域包括ケア病棟の役割
2017-08-23
【講演3】
自院からの街づくりと地域包括ケア病棟の取り組み
永生病院 理事長 安藤 高朗 氏


初台プロジェクトいう新たなる試み

今回の研究大会の大会長を務めた医療法人永生会理事長の安藤高朗氏は、永生会における地域包括ケア病棟の役割を紹介した。

冒頭安藤氏は、「地域包括ケアといわれてもふわっとしており、非常にイメージがしづらい」と指摘。そこで、若手医師が集まる東京青年医会において、東京都渋谷区の初台地域が果たして今後どうなるのか徹底的に分析する初台プロジェクトに取り組んだ。

プロジェクトでは、数百のデータをインプットして分析し、結果を導き出した。初台地域は人口が約2万4,000人。日本の人口ピラミッドは釣鐘型であるが、初台地域の場合は高齢者があまり増えないスペードのような形だった。初台地域はベンチャー企業が多く、若い世代は初台に住むが、結婚をし、子どもが生まれると他地域に転居してしまう。そのため高齢者が増えないという特殊な地域だった。また医療費や介護給付費も、2040年においても48億円しか増加せず、地域のGPDでやっていけることが分かった。このようにして、地域ごとに分析し、「わが地域ではどのような地域包括ケアシステムを作っていくべきかを検討することは非常に大事だろう」(安藤氏)。

さらにこのプロジェクトは、東京都医師会からの依頼で、東京都病院協会で行った東京都内の区部・市部の分析をするまでに発展した。そこでは当然ながら地域ごとに人口構造の差異が見られ、今後の指標となったという。


地域包括ケアの見える化はどうすべきか

安藤氏は、地域包括ケアシステムをもっと見える化しようと、地域包括ケアシステムのインディケーターを、ストラクチャー、プロセス、アウトカムという視点で考えてみたと披露。

ストラクチャーでいえば、地域包括支援センターの有無、かかりつけ医がいる人の割合、認知症初期集中支援チームの数、退院支援担当者の有無などを挙げた。プロセスでは、例えば地域ケア会議のメンバーの構成、多職種連携の勉強会の有無、退院後を見据えた投薬管理の実施。アウトカムとしては、医療介護のサービス連携率、地域における在宅復帰率、孤独死の発生率、在宅での看取り率などが挙げられるとした。

さらに、地域包括ケアと病院の役割について言及。安藤氏が率いる永生会では7対1DPCまで含めると慢性期など8種類の病棟を有し、独自の地域包括ケアシステムを形成している。街づくりのコンセプトとしては、医療・介護を通じた街づくり、人づくり、思い出づくりを理念にしている。特に大事なのは思い出づくりで、永生会のサービスを受けて良い思い出ができたと感じてもらい、自分たちも良いサービスを提供できたと思い出に残るようにし、そのコラボレーションこそが地域包括ケアの「最高のアウトカムなのかもしれない」と述べた。


住み慣れた街に戻るネットワークを組織

永生会のある八王子市では、八王子市高齢者救急医療体制広域連絡会を組織している。住み慣れた街で在宅の高齢者が急変し搬送されても、満床であったり受けられなかったりすると他のエリアに運ばれてしまう。そのため重症化したり、ADLが下がったりしてしまうと二度と住み慣れた街に戻ることはできない。そこで2次救急の団体、慢性期団体、行政、警察・消防、老人会が集まって作ったのが、救急医療情報シートだ。かかりつけ医、服用中の薬などを記入されたシートを冷蔵庫に貼っておき、それを救急隊員が確認をするシステムだ。

最後に永生会の地域包括ケア病棟を紹介した。永生病院の地域包括ケア病棟は、医療療養病床から転換した13対1看護配置の病棟で、現在50床ある。稼働率は20%を維持。地域包括ケア病棟の分類からすれば、ポストアキュート型に位置する。

また地域包括ケア病棟といっても、地域住民は何のことか分からないので、啓蒙活動を積極的に実施。職員の意識改革につながり、在宅復帰率も80%以上をキープし、データ加算の取得もできた。重症度・看護必要度については、30%を超えている。このスタッフの頑張りは、多職種によるカンファレンスなども要因の1つだ。

最後に安藤氏は、2018年、25年、それ以降もさらに厳しい時代がやってくると指摘。その状況下で医療機関はどのように経営していくべきかと持論を展開した。やはり内部要因と外部要因を分析し、データに基づいた行動、そして自ら自治体や国を巻き込んでいけるような行動が重要だとした。

(4)につづく

 

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