Communication/コミュニケーション

薬剤師力向上特集

ハイリスク薬の薬学管理指導のチェックポイント4

~精神神経疾患の患者対応

富永 敦子(とみなが あつこ)

株式会社医療経営研究所研究員
薬剤師。東北大学薬学部卒業後、製薬メーカーの研究員、医薬品卸の管理薬剤師、OTC薬の販売、病院薬剤師、薬局薬剤師と、薬剤師としてのあらゆる業務を経験。2008年から医療経営研究所に勤務し、薬局向けの研修や指導を担当している。日本薬剤師研修センター認定薬剤師、宮城県薬剤師会認定禁煙支援・指導薬剤師、NPO法人ふぁるま・ねっと・みやぎ副理事長、宮城県薬剤師会理事、東北大学薬学部非常勤講師(薬学概論)、NPO法人医療教育研究所薬剤師生涯研修担当講師。


自殺予防のゲートキーパー

 精神科の患者は、自殺という最悪の結果を招く可能性があることを常に忘れずに、患者の話をよく聞くことで信頼関係を構築し、医師との連携を大事にして、患者と共に病気の寛解を目指していくよう努めてください。

 

 自殺の予防についてですが、2008(平成20)年、内閣府自殺対策推進室が「自殺予防の10か条」を対策の一つとして公表しています。以下の10項目は、自殺の可能性のサインとして心にとめておきましょう。

 

(1)うつ病の症状に気を付ける(気分が沈む、自分を責める、仕事の能率が落ちる、決断できない、不眠が続く)
(2)原因不明の身体の不調が長引く
(3)酒量が増す
(4)安全や健康が保てない
(5)仕事の負担が急に増える、大きな失敗をする、職を失う
(6)職場や家庭でサポートが得られない
(7)本人にとって価値あるもの(職、地位、家族、財産)を失う
(8)重症の身体の病気にかかる
(9)自殺を口にする
(10)自殺未遂に及ぶ

 

 特に、自殺者のほとんどが、実際に最期の行動を起こす前に誰かに打ち明けているので、それを聞き逃さないことが大切です。

 

 私たち薬剤師は、自殺予防のゲートキーパーとしての役割をも担っています。それを自覚し、実際の業務において、予防策を効果的に実施していくことや対処方法などについてしっかり考えておくべきだと思います。

 

自殺念慮のある患者と向き合う

 

 薬剤師がその業務上、行うべき自殺予防のためのポイントは、図表8のとおりです。

 

 特にうつ病患者の場合は、一人にしないよう家族や周りの方に伝えておくことです。一人暮らしか、家族と同居か、親しい友達はいるのかといったことを、普段の患者との会話から把握し、一人にしないような対策を講じる一助とします。

 

 一方、統合失調症患者の場合は症状の波からいって、自殺の危険を予測するのがかなりむずかしいとされています。急性の精神症状が起きて、命令の幻聴や妄想といった病的な症状に支配されると決定的な行動に移してしまうことがあるからです。

 

 普段から「それは現実とは違うことだからね」というような声掛けをしておくことも有効でしょう。急性症状が消退直後には、今度は急に自分の価値が低くなり、「もうダメだ・・・」と自殺企図に至ることもありますから、家族や周囲の人とも連携することが予防に役立ちます。

 

 薬剤師としては過量服用に対する注意も怠らないようにします。具体的には、次のようなことが挙げられます。

 

(1)来局間隔、処方日数から過量服薬や依存傾向を確認する
(2)頓服としての服用について、その回数を確認する
(3)残薬を具体的に聞く
(4)自殺の可能性のある患者は、長期処方=大量服薬を避ける。
 できれば1週間ごとの受診がベター。処方医と連携を取る

 

地域医療に必要な人材として

 場合によっては、医師から「患者と話さないように、何も聞かないように」と指示されることもありますが、それでは大事な情報を肝心な担当医が見逃すことにもなりかねません。服薬処方のことはもちろん、薬剤師として気になったこと、薬局の現場で拾った患者の情報などを報告、提案するなら、例えばトレースレポート(図表9)という形で行うのも一つの方法です。

 

 精神科領域の患者をフォローするにしても、あるいは一般的な診療所の患者さんに対して、精神科領域の専門家への受診奨励を行うにしても、専門の職能やコミュニケーションカを発揮し、薬剤師ができることはいろいろあるはずです。

 

 ハイリスク薬の管理から患者のアウトカムに向かってサポートしていくことで、地域医療にますます必要な人材として活躍していただきたいと思います。

 

※この記事は、2D14年6月14日に開かれた「第13回薬剤師力向力セミナー」(弊社主催)の内容をもとに構成したものです。

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