Communication/コミュニケーション

薬剤師力向上特集

調剤報酬改定に伴う、薬剤師・薬局の役割3

~超高齢社会における医療保険制度・社会保障制度の視点から

山本 信夫(やまもと のぶお)

公益社団法人日本薬剤師会会長
1973年東京薬科大学卒業。薬局勤務を経て、1998年日本薬剤師会常務理事、2006年間会副会長に就任。社会保障審議会医療部会委員、中央社会保険医療協議会委員、チーム医療の推進に関する検討会委員などを歴任。2012年公益社団法人東京都薬剤師会会長に就任。2014年6月から現職。


医薬分業制度の意味と薬剤師がすべきこと

 医薬分業バッシングという言葉がありますが、世界中を見ても医薬分業をいらないと断言している国はおそらくないはずです。医と薬を分ける仕組みはまさに知恵であり、必要なこと。ですから制度そのものを否定されるのは、いささか納得のいかない部分があるのですが、われわれとしてもやはり医薬分業の制度とは何か、そのなかで薬剤師がすべきことは何かを原点にもう一度戻って考えてみる必要があります。

 

 特にここ1、2年の医薬分業バッシングは、薬剤師不要論に近いほど厳しいものといえますが、私なりに反省点を考えてみました。

 

 一つは、庶民感覚から見て大きくかけ離れた報酬をもらっているのは、客観的に極めて大きな問題と言わざるを得ません。その一方で、常識を超えた用地の買収が行われている。いまや地方行政は赤字の出る恐れがあったら、病院をつくって薬局を誘致すればお金を稼げるという風潮すらあります。しかも民間病院ならまだしも、県立や市立、国立病院までそういったことをやろうとしている。

 

 コンビニ以上に早い店舗展開のスピードも問題です。また、医薬品提供体制を考えて経済効率が優先されてしまい、なるべく手聞をかけず、楽に仕事をしていると疑わざるを得ない状況も実際に存在します。

 

 こういった現状を鑑みると、薬局は本当に社会の要請に応えているといえるでしょうか。ある地域では、魚屋さん、肉屋さん、八百屋さんなどは1軒ずつしかないのに、薬局は10軒もあるような異常な事態が起きています。私の近所には、一つの病院の周辺に薬局が13軒点在し、そこには病院へ行く道が13本あります。つまり病院からのすべての帰り道に薬局があるわけです。これはちょっと尋常ではない。

 

 医薬分業制度の今後を考えれば、薬剤師が国民から信頼されるという当然のことを徹底しなければいけません。医療機関などの経済的要因で進んできた分業では、早晩衰退してしまうでしょう。同時に、医薬分業が伸びることは当たり前のことのように思っているのも問題です。事実、医薬分業の伸び率は2000年をピークに、かつてのような勢いはなくなっています。それを無視して、まだまだ伸ぴる前提で対応を考えてはいないでしょうか。

 

 私が薬剤師になったのは医薬産業が1兆円を超えた時代で、診療報酬に占める調剤割合はわずかだったのですが、現在は調剤医療費がほぼ全体の2割に近づいています。そんななかで患者や国民に負担を求めるには、業務自体の必要性や価値、あるいはどの程度コストがかかるものなのかを、この先データやエビデンスとして提示していくことが課題といえます。

 

 打開策を簡単に申し上げることはできませんが、薬局は地域医療への貢献、病院の薬剤師はチーム医療への貢献という課題が、それぞれに求められていると思います。

 

 こうした大きな課題を抱えたなかでの2014(平成26)年度診療報酬等の改定(図表2)であったわけですが、論点を見ると、かかりつけ薬局の機能強化があります。あちこちの薬局に行くのではなく、決めたところで薬をもらう。さらにいえば、かつてのように薬がおまけではなく主役になれる部分も出てきましたので、そうした薬物治療の経過をどう観察してマネージメントしていくか。不要な薬を削ることも含めたマネージメントをして、良い療養環境をつくっていくことが基本的な方針だと認識しています。

 

 そのうえで、在宅医療においても適切な薬物治療を提供する。入院、外来、在宅の三つに分けて考え、薬局に来られない方も同じように医療が受けられる体制を組まないと、地域医療は持たないというのが基本方針の意味するところだと思います。

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