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薬剤師力向上特集

調剤報酬改定に伴う、薬剤師・薬局の役割1

~超高齢社会における医療保険制度・社会保障制度の視点から

山本 信夫(やまもと のぶお)

公益社団法人日本薬剤師会会長
1973年東京薬科大学卒業。薬局勤務を経て、1998年日本薬剤師会常務理事、2006年間会副会長に就任。社会保障審議会医療部会委員、中央社会保険医療協議会委員、チーム医療の推進に関する検討会委員などを歴任。2012年公益社団法人東京都薬剤師会会長に就任。2014年6月から現職。

 昨年10月1日の内閣府統計によるとわが国の高齢化率は25.1%を超え、過去最高となった。
医療制度改革や高齢者医療制度の見直しが進められるなか、薬局・薬剤師はどう活路を見出し、存在価値を発揮していくべきか? 日本薬剤師会会長の山本信夫先生にお話をいただいた。


 調剤報酬改定に伴う、薬剤師・薬局の役割ということで、かなり大きな視点にはなりますが、調剤報酬改定で具体的にどんなことが変わり、それに対して薬剤師の方々はどのようにしていくべきかを今日はお話したいと思います。

 

地域包括ケアシステムにおける薬局の役割

 わが国の人口は、現在およそ1億2千万人ですが、2055(平成67)年には8千万人台になるという推計があります。人口構造で見ると先進国の場合、子どもの数が少なく、高齢者が増加する傾向にありますが、日本はその変化が極めて早いことが危倶されています。

 

 さらに言うと、日本の医療保険制度、社会保障制度は基本的に税金と保険料で賄われているわけですが、それらを支払うのは20歳から64歳くらいまでのいわゆる勤労世代です。2005年は勤労世代と65歳以上の人口の比率がおよそ3対1でしたが、2055年にはほぼ1対1に推移することが予測されています。

 

 3人に1人というのは、騎馬戦のような格好で背負っているので、1人1人の負担は比較的楽なのですが、2055年はおんぶ、つまり1人の若者が1人の高齢者を背負う形になります。そのうえ日本人の認知症発症率が50%といわれている今、認知症の人が認知症を背負っていたり、認知症の人が元気なお年寄りを背負うというような状況にもなりかねません。子どもの数がなかなか増加しないまま、高齢者が40%を超えた場合、平均的な医療費は3倍ほど違ってきて、かなりシリアスな問題が発生することが目に見えています。

 

 最近の医療費は、年に3%程度、額にすると1兆円ほど伸び続けているのが現状です。その原因は何かというと、高齢者が増えて罹患率が高くなると、必然的に1人が複数の疾病を持つようになる。健康で長生きできる環境が整うのは、国民としては望ましいことですが、一方で必要以上の医療費や処置に対する議論が、今後起きてくることが予測できます。

 

 医療に関わる者からすると、過剰な診療は必要ないと思いますが、必要な診療まで絞られてしまうことにはやはり抵抗感があります。とはいえ医療提供側も、過剰な診療が起きないような環境を、薬剤師も含めてつくっていくことが急務であると考えています。

 

 国としてもこの先、どのような仕組みをつくっていくかが大きな課題になっており、われわれなりにそれを読み解いてみると、坂を転がるようにそれぞれのステージで在宅サービスへ移行しようという動きがあります。坂の上のほうにある高度急性期医療については、数を限るのではなく、必要な方に必要なものが提供され、段階的に高度急性期から一般急性期、亜急性期へ移っていくような過程をつくっていこうということにほかならないのだと思います。

 

 病床についても、以前からさまざまな議論があります。そもそも一般病床とは何かというと、1948(昭和23)年に医療法が制定されて以来、名前こそは「一般」となっていますが、実際は急性病床に相当するものです。つまり普段元気にしている方々が、何かしら問題が生じて入院せざるを得なくなって、入るところが一般病床。それをさらに進めたのが高度急性期と一般急性期と亜急性期になるのですが、ここでいう「急性」とは、長期療養を要する、あるいは医療施設、介護系の施設が関わってくるのが大きな特徴といえます。ただし入院医療の機能分化がなかなか進んでおらず、それについては常に議論が行われています。そこを機能分化すると、医療機関は急性期に特化した診療を提供し、その後は在宅へ移行していく。在宅の周りには、それを支える在宅療養支援診療所や在宅療養支援病院といった施設が存在します。さらに医療にプラスして介護を含めた総合的なシステムが必要となり、それに向けて進めるのが地域包括ケアシステムだと理解しております。

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