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薬剤師力向上特集

糖尿病治療における薬剤師の役割2

~アドヒアランス向上と薬剤の適正使用推進のために

菅原 正弘(すがわら まさひろ)

医療法人社団 弘健会 菅原医院 院長
公益社団法人日本糖尿病協会理事・東京支部長。東京内科医会会長。1980年順天堂大学医学部卒業後、順天堂医院にて内科診療に従事。93年から現職。2001年日本臨床内科医学会長賞受賞。12年東京内科医会会長。13年第30回日本臨床内科医会総会会頭。『40歳からの糖尿病との上手なつき合い方』(中経文庫)など著書多数。


糖尿病治療のポイント

 まずは、健康な人と変わらない健康寿命の維持を目指して、早い段階から糖尿病に注意することです。そのためには、さまざまな合併症の兆候はもちろん、血糖値のほかに、体重、血圧、血清脂質などの関連項目や生活習慣を含め、トータルで管理することが重要です。

 

 糖尿病と診断されたり、あるいは疑われる場合に基本となるのは血糖のコントロールですが、日本糖尿病学会で報告されたHbA1c目標値は以下のとおりです。(1)「血糖正常化を目指す際」で6.0%未満(2)「合併症予防のため」で7.0%未満(3)「治療強化が困難な際」で8.0%。患者さんの年齢や低血糖の危険性など諸条件に配慮して目標値は設定されますが、だいたいこの数字を目安に対処するのが通常です。(参考図表)

 具体的な診断、治療ということでは、国の政策で実施されたいわゆる「メタボ対策」の結果、検査で血糖値異常が発見され、まず食事や運動といった生活項目の改善による治療を行った結果、初期患者数が横ばいになるという良い傾向も見られます。

 

 症状が進んだ場合でも、いまは比較的安全に血糖値コントロールのできるタイプの薬が出ていますから、低血糖に配慮しつつ、それらを利用するのも手です。薬でいえば、患者さんが糖尿病薬の処方箋を持ってきたときに、薬局の薬剤師さんからも、薬に関連すること以外の注意事項、例えば眼科を定期的に受診しているか患者さんがブドウ糖を携帯しているかなど、ぜひ確認していただきたいと思います。医師や薬剤師さん、家族などの声掛けが、病気の進行を抑える一助となるはずですから。

 

アドヒアランス向上のために

 糖尿病治療薬について、医師は患者の病態に即した経口血糖降下薬を選択しますが、以下のポイントを基準として判断します。(1)食前、食後のどちらの血糖値を下げるか(2)膵臓に負担がかかるか(3)体重を増やすのか減らすのか(4)動脈硬化を抑制できるか(5)低血糖を起こしやすいか(6)薬の強さ(7)値段(8)服薬(注射)回数(9)グルカゴン抑制効果があるか。

 

 こうした点から、患者の状態を把握し、説明した上で、メトホルミン、Dpp-4阻害薬、α-GIなど、適材適所の薬を処方します。一定の期間をおいてHbA1c値の変化を見ながら、場合によっては、それらを2剤、3剤と併用しますが、相性や効果を十分考慮したうえで最終決定するのは言うまでもありません。

 

 合併症は避けたいものですが、糖尿病自体は患者さんの日頃の努力やアドヒアランスの向上で改善が期待できる病気です。少しでも患者さんの苦痛や患者数そのものを減らすために、関係する科目の医師や薬剤師も垣根を超え、協力していくべきだと私は考えています。

 

※この記事は、2014年4月20日に開かれた〈第11回 薬剤師力向上セミナー〉(弊社主催)の内容をもとに構成したものです。

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