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コラム

在宅医が薬剤師に求めること~認知症に対する理解と在宅医療のあり方

2014-04-01

認知症の高齢者数が年々増加し、在宅医療のニーズが高まるなか、薬剤師は医師や患者、介護者などとどのように連携を図っていくべきか。たかせクリニックの髙瀬義昌先生に在宅医の立場から、認知症に関する正しい知識とアドバイスをいただいた。

認認介護の時代

厚生労働省や大学などによる各種調査をもとに推計すると、わが国の65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症だと思われます。

私のところで在宅医療を受けている患者さんが、あるとき粗相をしてしまい、奥さまと私が汚れたじゅうたんを片付けたことがありました。翌日奥さまから電話があり「先生大変!うちのじゅうたんが盗まれました」と言ってきました。それを聞いて、介護している奥さまにも認知症の疑いがあることに気がつきました。

「認認介護」という言葉は私がつくったのですが、これは認知症の介護をしている人も認知症を患っている状態をいいます。

家族のサポーターとして

医師やヘルパー、ケアマネージャー、薬剤師の皆さんとチームワークを組んでいいお看取りをすると、まるで素晴らしい音楽を奏でたあとのような爽快感が生まれます。そういったチームワークの妙を味わうのが、在宅医療の究極のゴールなのかなと思います。そのために必要な在宅医療のビジョンは、よくある病気を生活の場で見つけ、患者さん本人あるいはご家族のサポーターになることです。

私が在宅医療支援をしている患者さんに、脊髄小脳変性症という足腰が立たなくなる病気と糖尿病、さらにパニック障害を患っている85歳の男性がいました。

あるとき、開業したいという整形外科のドクター仲間とともに男性のご自宅へ伺い、私が男性を診ている間、整形外科のドクターが奥さまと雑談をしていました。そしたら奥さまが「整形外科の先生なら、ちょっと聞いてほしいんだけど」と、ご自身の体調不良について話し始め、5分歩くと足が痛くなって動かなくなると言ったそうです。それで靴下を脱がせてみたら、足が冷たく紫色になっていた。介護のストレスからタバコもかなり吸っているとのことだったので、閉塞動脈硬化症を疑って、専門医に診てもらったら予想どおりでした。

介護をしているご家族の方も病気になる可能性は常にあり、そこをわれわれがうまくサポートすることで在宅医療が継続できるのだということを忘れてはいけません。

認知症への対応

認知症には図1のように治るものと治らないものがあります。治る認知症で多いのは、慢性硬膜下血腫と正常圧水頭症です。ほかにはビタミン欠乏症でも認知機能が低下することがあります。治らない認知症はアルツハイマー型認知症をはじめとして、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症などがあります。

アルツハイマー型認知症の患者は100万人以上いるといわれており、初期によく見られる症状として、においがわからなくなったり、急に部屋が散らかりだす、といった例があります。また介護してくれる方がお金や大事なものを取ったと疑うのも多い症状です。

これらは<ドネペジル>などでコントロールもできますし、<メマリー>のようなNMDA阻害剤でもある程度進行を遅らせることができます。

レビー小体型認知症は少々トリッキーなところがあって、意外に専門医が見逃しやすい症例です。たとえば「そこに赤ちゃんがいるよ」と言いだすなど、生々しい幻視が最初に出るのが特徴です。またレム睡眠行動障害といって、夢遊病のように動き回ったのに、翌日まったく覚えていないということもあります。

血圧の変動なども出やすいので、症状のバリエーションが多くてなんか変だと思ったら、この病気を疑ってもよいでしょう。少量のドネペジルが効果的ですし、騒いでしまう人は漢方の抑肝散を1日1包飲むだけでも、かなり抑えることができます。

血管性認知症は脳梗塞や脳卒中を伴う認知症で、脳梗塞などを繰り返すことによって起こりやすくなります。アルツハイマー型あるいはレビー小体型と合併する場合もよくあります。前頭側頭型認知症で特に問題なのは万引きなどの軽犯罪を犯してしまう点です。物事に非常に強いこだわりを見せるのも特徴で、どんな天気でも毎朝決まった時間に近所のお寺へお参りに行ったり、いつも同じテーブル、同じイスに座らないと気が済まず、座る角度が少々変わっただけで、癇癪を起こしてしまうこともあります。

認知症患者に100%出てくる症状を中核症状といいます。図2の「記憶障害」から始まって、右から順番に症状が出てきます。一番左の失行の代表例としては、夏なのに十二単のように着込んでみたり、冬なのに下駄にステテコ姿だったりするような、着衣失行が挙げられます。

その周りにあるのが周辺症状(BPSD)で、これらは大体3カ月から2年の周期で出たり消えたりします。ただしこのなかで特殊なのが「せん妄」で、ぼーっとするなどの意識混濁や注意散漫、認知や知覚の変化が現れます。せん妄は便秘や脱水、発熱などで誘発されやすいのが特徴です。

図3のように薬剤性によるものも多く、BPSDにおける抗精神病薬使用のガイドラインが厚労省から出ておりますので、ぜひ参考にしていただければと思います。

せん妄には活動性と非活動性があって、活動性は自ら点滴の管を引っこ抜いて、ベッドのうえに仁王立ちになって管を振り回すなど、興奮状態に陥ります。しかも夜間に出現するのが特徴です。非活動性は、急にしゃべらなくなったり、食事が取れなくなったりしてしまいます。いずれにしても突然起こるので、在宅医療はせん妄との戦いといっても過言ではありません。

多剤服用からの脱却

朝昼晩、1日3回30種類ものお薬を飲んでいた方の睡眠障害を調節するために、ベンゾジアゼピン系を<テトラミド>に変え、ごく少量の<リスパダール>と<メマリー>にして、1日1回の処方にしたら、その日から劇的に眠れるようになったという事例があります。しかも薬の量も減って1日4、5錠で済むため、年間30万円くらい掛かっていた薬代が浮く結果になりました。

効いているのかどうか分からない薬を出し続けるのではなく、副作用をできるだけ減らし、医療費の増大を抑えるためにも、多剤服用からの脱却は大きな課題です。薬を減らしたほうが調子がいいのは、私も医師として身をもって体験していますし、そういった情報を地域の皆さんに還元していきたいと思っています。患者さんにどの薬がふさわしく、どのように処方したら患者さんやご家族のお財布、さらには国のお財布に優しいのか。私たちがチームワークで共に探求していくことが、何よりも大事なのではないでしょうか。

髙瀬 義昌(たかせ よしまさ)氏
NPO法人メディカルコンソーシアムネットワークグループ理事長。1955年生まれ。国家公務員共済組合連合会虎の門病院臨床検査部、診断薬会社、動物実験研信州大学医学部卒業。東京医科大学大学院修了。麻酔科、小児科研修を経て、以来、包括的医療・日本風の家庭医学・家庭療法を模索するなか、民間病院小児部長、民間病院院長などを経験。2004年東京都大田区に在宅を中心とした「たかせクリニック」を開業。現在、認知症のスペシャリストとして厚生労働省推奨事業や東京都・大田区の地域包括ケア、介護関連事業の委員も数多く務め、在宅医療の発展に日々邁進している。

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