Communication/コミュニケーション

薬剤師力向上特集

薬剤師のための患者クレーム対応1

~クレーム対応に万全を期して、患者満足度アップを狙うコツ

濱川 博招(はまかわ ひろあき)

人材派遣・教育・研修などを行う株式会社ウィ・キャン代表取締役。関西大学法学部卒業。顧客満足、患者満足及びクレーム対応のスペシャリストとして、全国で高い評価を得ている。その実践的なコンサルティングが医療機関、企業、サービス業などで実績を上げるとともに、講演、研修、執筆マスコミ対応にも精力的に取り組む。医療機関における患者クレーム対応についても、広く全国で講演、研修を行っている。主な著書に『どんな患者さんからもクレームがこない接遇のルール』(エクスナレッジ)『できる看護主任・リーダーのコーチング術』『第一印象が良くなるナースのマナー』(2点とも、ぱる出版)などがある。

 調剤薬局の立ち位置が問われているいま、患者クレームにどう対応するのか、薬剤師が学び、実践すべきことは多い。その対策や患者とよい人間関係を構築する方策などについて、顧客満足度アップやクレーム対応のスペシャリスト、株式会社ウィ・キャン代表取締役の濱川博招先生にレクチャーしていただいた。


 私は病院をはじめとする医療機関などの顧客満足度やクレーム対応について、コンサルティングや研修を行っています。これまでの経験を踏まえて、今日は薬剤師のための患者クレーム対応についてお話しします。

 

 いきなり医療事故の話で恐縮ですが、薬剤師さんを含め、医療従事者の方の専門技術や専門知識、いわゆるテクニカルスキルが原因で起こったものは全体の何%ぐらいあると思いますか?
 実は、わずか15~20%ぐらいだといわれています。薬剤師の皆さまの専門スキルで事故やクレームが起こることはほとんどないといえるわけです。

 

 では、それ以外のどんな理由で事故やクレームが生じるかといいますと、それはメディカルリレーション・マネジメントスキルと呼ばれる能力の不足などからです。なかでも人間性を評価する基準である「ヒューマンスキル(共感基礎力、コミュニケーション力、ホスピタリティ力、コンプライアンス力の4つ)」は患者対応力を高めるのに重要な能力で、クレーム対応など、患者さんという顧客を相手にしたときの人間関係をよりよく保つために必要であることを、まず最初に認識していただきたいと思います。

 

苦情とクレームは別のもの!? 対応の方程式とは・・・

 さて、日本では苦情とクレームはあまり区別されていません。厳密に言うと「苦情とは不平不満を言うこと」で、「クレームとは何らかの賠償を要求すること」です。

 

 例えば、患者さんから電話があり、「薬が足りなかった。今度から気をつけて」というのが苦情。言ってしまえばすっきりすることもあるようです。たいていは自分の期待が裏切られたことが原因で苦情となって表れます。一方、「薬が足りなかったから、すぐに自宅まで届けてほしい」と要求するのがクレームです。不平不満が蓄積したり、相手のミスで自分が不利益をこうむったと感じたとき、クレームに至ります。

 

 どちらにしても対応の鉄則は、内容をよく聞き、期待に添えなかった事実に共感の気持ちを表すこと。そのうえで、できることとできないことを明確に伝えます。特にクレーム対応は担当者1人でなく複数の人で行うべきです。具体的にどのようなクレームなのかを、相手=クレーマーに詳細に聞くことが対応の第一段階となります。

 

 そして、最初の言葉が大きなクレームに発展するかどうかの境目が、患者によるクレームに対する、薬剤師の最初の反応です。「家に帰って確認したら、薬の量が少し足りないようなんだけど」と電話があったとき、さて、皆さんならどんな第一声を発しますか?
(1)「え、そうですか? ちょっとお調べします」
(2)「大変申し訳ございません。お薬が足りなかったんですね。少しお話を伺わせていただけませんか」
 どちらもほとんど変わりませんし、(1)も(2)もありですよね。でも、実際には(1)のように答える方が多いのでは?

 

 ところが、(1)のように答えると、患者は自分の言葉や行為を否定されたように受け止め、無意識のうちに感情的になってしまいます。だから、「足りなかったから電話しているのに、調べるってなによ」と思うばかりか、声を大にしてそれを口にする方もいるでしょうし、そこへ「いやぁ、お薬、足りないことはないようですね」などと対応しようものなら、「私がウソ言ってるっていうの? なんならウチまで見に来たら!」という険悪な方向に発展しかねません。しかも、相手は言いにくいことをわざわざ言っているので、声が大きくなったり、早口になったりするのも当たり前です。

 

 かたや(2)のように言われると患者の気持ちが変化して「そうなの、○○の薬が足りなかったのよ」となり、その後は冷静な判断による会話へと進むことが期待できます。

 

 このように、クレーム対応には解決の方向に向けて方程式があると心得てください。その方程式に従って、まずは謝ること。謝ってから相手の主張を聞く。そこから本格的なクレーム対応がスタートするのです。

 

 その方程式をフローチャートにしたのが図1です。苦情を受ける→スピーディなお詫び→傾聴による内容の把握→判断へ。4つ目の「判断」で2つに分かれますが、内容が正当なものなら素早く解決策の提案をして解決へ。一方、悪質で悪意が感じられる内容なら、すぐに回答せずに、ゆっくり余裕を持って組織として対応しましょう。

 

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