Communication/コミュニケーション

薬剤師力向上特集

薬剤疫学への誘い~エクセル統計を用いた分析 1

杉森 裕樹(すぎもり ひろき)

大東文化大学スポーツ・健康科学研究科健康情報科学領域予防医学教授。医学博士。厚生労働科学研究「患者及び医療関係者との医薬品等安全対策情報のリスクコミュニケーションに関する研究」研究代表者(2012年度)。厚生労働科学研究「国民および医療関係者との副作用情報にかかるリスクコミュニケーション方策に関する調査研究:副作用の効果的な情報伝達手法の検討」研究代表者(2009-2011年度)。医薬品医療機器総合機構(PMDA)専門委員「薬剤疫学研究の実施に関するガイドライン作成検討会委員」。

 医師や医学系研究者の研究ツールとして必要不可欠な統計分析の手法を、薬剤師で取り入れている人はまだまだ少ない現状を踏まえて、統計分析の重要性とその活用法について、おふたりに指導していただいた。


薬剤師にとってなぜ統計分析が必要なのか? 杉森 裕樹先生

 

 みなさんは薬剤疫学という言葉を耳にしたことがありますでしょうか。日本薬剤疫学会の久保田潔理事長の言葉を引用すると、薬剤疫学は「人の集団における薬物使用による効果と副作用を薬学的手法を用いて研究する学問」ということになります。これまで医療の世界では動物実験のデータを重視する傾向がありましたが、薬剤疫学は人を対象にするところが大きなポイントです。

 

 疫学というのは統計分析をした結果、有意差があったかどうかが大事であるため、個人ではなく集団を相手にするのも大きな特徴です。ここで言う集団とは国や地域のことで、まさにメガデータを意味します。普段からみなさんは、薬歴管理システムや調剤などのデータを扱っておられると思いますが、そういった現場のデータが薬剤疫学でも非常に重要な要素になるのです。市販後調査も製薬企業などが多く実施しているのが現状ですが、医師や薬剤師が主導となって始める研究も今後必要です。

 

 近年では薬学部も6年制となり、薬剤師の職能拡大も視野に入ってきております。問診を十分に行って副作用を未然に防いだり、臨床の場で直接患者さんと関わる機会が増えています。そしてそのような幅広い業務を通して、さまざまなデータが集積されています。経済産業省が指導する形で、こういった医療データベースを積極的に活用することで、経済を活性化させようという動き(「日本再興戦略│ JAPANisBACK│」)も一方であります。まだまだ慎重論もありますが、欧米の流れを見ると、そういったデータは今後ますます重要になっていくだろうと個人的には思っています。

 

 現状の業務の中では、データを分析するゆとりなどなかなか持てない、というふうに医療関係者の多くは思っているかもしれません。しかし年間の医療費が40兆円に届こうとしている今日、国民にレベルの高い医療を効率よく提供するためにも、こうしたデータを分析して、何らかのアクションにつなげるという動きは、日本でも徐々に重視されるようになるはずです。

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