Communication/コミュニケーション

薬剤師力向上特集

心を動かす薬局広報~脳科学で薬局広報は変わる 4

山田 隆司(やまだ たかし)

NPO法人メディカルコンソーシアムネットワークグループ理事長。1955年生まれ。国家公務員共済組合連合会虎の門病院臨床検査部、診断薬会社、動物実験研究所などを経て、亀田総合病院附属幕張クリニックで事務長、管理部長を務める。2007年から社会医療法人敬和会大分岡病院にて広報・マーケティング部顧問として現在に至る。多摩大学医療・介護ソリューション研究所副所長。


記憶に残るような仕組みを作るために

 皆さんは、物事の“いい悪い”をどこで考えていると思いますか? 最近の大手広告代理店などは、品物を見せたり、ラッピングを見せたりしたときの脳波を測定して、マーケティングを行うそうです。いい悪いという判断は、感情による部分が多くを占めているのです。

 

 薬剤師としては、患者さんに対して論理的な説明が必要だと思うかもしれません。しかし受け取る側は、論理的なことばかり言われても感動することはできません。冷蔵庫や炊飯器などの家電を選ぶとき、最終的には機能よりも、色やデザインで決めませんか?
 病院だっていいか悪いかは、実際にかかってみないと分からない。でも汚い病院ときれいな病院だったら、きれいな病院に行きたいと思いますよね。イメージキャラクターが広報に非常に役に立つのも同じ理由で、キャラクターのあるほうが親しみやすく、記憶しやすいからです。大分岡病院でも、「オカピ」という動物をイメージキャラクターにしており、多くの人に認識していただいています。広報は感情に訴えていかに記憶させるか、ということが大事なのです。このことは普段からみなさんも、生活のさまざまな場面で経験されているはずなので、その経験を仕事のなかで生かせば、いろんなことができると思います。

 

 人の五感は影響を受けやすい、つまり記憶に残りやすいもののひとつです。年齢が上がってくると薄い紙をめくりにくくなって、指をなめてからめくる人が多いと思います。しかし個人の持ち物ならまだしも、病院に置かれている広報誌でそれをやると、衛生上よろしくないので、私たちはめくりやすいように少し厚めの紙を使っています。大分岡病院の『おかのかお』という広報誌は、前から読んでも後ろから読んでも同じタイトルで、覚えやすさを意識しています。表紙の絵は、同じ作家さんに毎回描いてもらっています。表紙を検討する際、いろんな人の作品を見たのですが、病院で待っている方が手に取ったとき、優しい印象を与えるような雰囲気の絵を採用しました。デザインでは、どの色を使うのかも大切です。赤視症や青視症の人たちにはどんなふうに見えるのか必ずチェックして、誰が見ても違和感のないような色使いを考えています。文字も同じく、ストレスのないものがいいですね。これらのことは、脳科学のマーケティングの本などを読むと参考になると思います。

 

 私どもの広報誌を持ち帰る人は多くいらっしゃいます。家の中でできるリハビリの情報は特に人気があって、なくなるとコピーを取ってほしいという人もいるほどです。「栄養士のメディカルレシピ」という体にいいレシピを紹介するページを見て、「料理を作ってみました」と言ってくださる方も結構います。そういった形で広報誌を通して、いろんなコミュニケーションが取ることができるのです。

 

 広報の一番大きな役割は、中の成果を外に知らせるということです。薬局でいろいろなことをやって成果が出た場合、それを外に伝えるのはとても大事なことなのです。どんなに有名な医者がいても、患者さんが来なければ腕の発揮のしようがありません。薬局も同じで、どんなにいい調剤をしても、患者さんが来てくれなければ皆さんの能力は十分に発揮できないわけです。外に成果を伝えれば、メディアなどがそれを取り上げてくれる可能性もあります。広報誌を新聞社にずっと投げ込んでいたら、30号目に新聞に載って大きな広報になりました。新聞は発行部数も多いので、広告費に換算するとかなりの効果になります。記憶してもらうための仕組みをどうやって作るか。薬剤師が積極的に前へ出て、地域とコミュニケーションを取ることで、競争の中で優位になれるのだと思います。

 

(※この記事は、2013年10月12日に開かれた「第7回 薬剤師力向上セミナー」(弊社主催)の内容を要約したものです。)

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