Communication/コミュニケーション

薬剤師力向上特集

慢性疾患治療薬のアドヒアランス向上を目指した服薬指導とは 3

堀 美智子(ほり みちこ)

薬剤師。医薬情報研究所 株式会社エス・アイ・シー取締役/医薬情報部門責任者。一般社団法人日本薬業研修センター 医薬研究所所長。名城大学薬学部卒。同大薬学部医薬情報室、帝京大学薬学部医薬情報室勤務を経て、1998年から2002年日本薬剤師会常務理事。主な著書に『OTC薬ハンドブック』(じほう)、『ハイリスク薬説明支援ガイドブック』(じほう)など。


薬剤師として患者に伝えるべきこと

 高血圧症の早期発見や血圧を意識してもらうためには、習慣的に測定することで日内変動、つまりは基底血圧と随時血圧を理解し、早朝高血圧あるいは夜間高血圧、季節の変動などがあることを知っていただくことが大切です。そういった意味でも家庭内血圧の測定は必要不可欠です。

 

 各製薬メーカーによって、生活習慣の修正などに関するさまざまなパンフレットが作られています。薬剤師は患者さんとの会話の中でこうした情報を積極的に伝えていくべきなのですが、実際はパフレットを「ご自由にお持ち帰りください」と置いているだけのところがほとんどではないでしょうか。これらは患者さんに説明をする際、非常に役に立ちます。しかしきちんと管理をしていないと、いざというときにどこにあるのか分からず、有効活用できないままになってしまいます。このような課題を解決するため<GooCo(グーコ)>では、パフレットの内容を検索・表示して、すぐに説明に使えるような機能の実現を予定しているようです。

 

 実際に薬物療法が必要になった際、長期にわたる服用を容易にするためには、1日1回服用の薬剤が望ましく、飲む回数が少ないほどアドヒアランスは高くなります。夜間に薬を飲むときの注意事項として、私の薬局で起こったこんなエピソードがあります。「薬はコップ1杯のお水で飲んでください」と定形文句のようにお伝えしていたところ、胃食道逆流症の患者さんに「薬を飲むようになってから、夜中に何回もトイレに起きるようになった」と言われました。プロトンポンプインヒビターで夜間頻尿が出るのかと、薬局内で問題になったのですが、実はコップなみなみに注いだ水が原因でした。それを機にそのほかの患者さんにも聞き取り調査をしたところ、やはりコップ1杯の水をしっかり飲んでいる人には、夜間頻尿の症状が出ていました。しかし今さらコップ1杯でなくても大丈夫ですよ、などとは言えませんし、やはり薬はたくさんの水で飲んでいただきたい。結果的に就寝前に飲む薬をOD錠に変えることで解決しました。夜間どのくらいトイレに起きるのか、あるいはどのくらいの水で薬を飲んでいるのかは、些細なことのようですが確認を怠ってはいけないと実感した経験です。

 

 私はいつも患者さんに「お食事をおいしく召し上がれていますか?」と聞くようにしています。「何を食べても味気なくてね」とおっしゃる場合は、味覚障害、口渇などの副作用の可能性があります。吐き気がするのも要注意です。「すぐにむせちゃうのよね」という方は、液体を飲むのが困難かもしれません。それでは薬の服用がむずかしいかも。単剤あるいは合剤を用いて服用錠数を少なくし、処方を単純化することはアドヒアランスの改善に有用です。

 

 副作用は、発症機序、発現頻度、患者背景との関係、症状などから早期発見することが第一です。カルシウム拮抗薬の場合、火照りや目まい、ふらつき、頭痛、動悸などは血管が拡張したことによって起こるものといえます。あるいは連用によって歯肉肥厚が起きることもあります。歯肉肥厚の防止に口腔ケアは重要です。定期的に歯医者さんへ行くよう促したり、オーラルケア用品を薬局に置いてみるのもよいでしょう。口渇を引き起こすような薬をたくさん飲むことになるので、唾液が上手に出るような体操を紹介することでも違ってくるはずです。

 

 薬を飲み忘れたのに血圧が上がらなかったため、飲む必要がないと判断して止めてしまったら、しばらくして「血圧があまりに高くて」、と慌てて来局される患者さんもおります。飲み続けることの大切さを伝えるのは重要ですが、それ以外にも血圧が高いときお風呂に入っていいのか、風邪を引いたとき市販の薬を飲んでいいのかなど、店頭でお伝えすべきことはたくさんあります。

 

 お薬手帳に関しては、併用してはいけない薬を明記し、患者さんには服用してからの体の変化を記録するようお伝えしましょう。摂取した食品、血圧値、睡眠の状況などをお薬手帳に記録することで、その人の健康情報が蓄積されていくのです。「今日で薬がなくなっちゃったの。間に合ってよかった!」とおっしゃる患者さんも少なくありません。災害などの緊急時に備えて、自力で生き抜くために最低3日分の常用薬を身につけておく意識も大切です。

 

 薬剤適正使用のためには、患者さんに合った薬の選択と、患者さんが理解し受け入れられる服用方法、予測される副作用とそれが出現した場合の適切な対処法、そして日常生活での注意事項を理解していただくことが重要であり、薬局でお伝えしていくべきことだと思っております。

 

(※この記事は、2013年5月20日に開かれた「第2回 薬剤師力向上セミナー」(弊社主催)の内容をもとに構成したものです。)

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