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コラム

調剤報酬改定に伴う、薬剤師・薬局の役割

2014-09-01

昨年10月1日の内閣府統計によるとわが国の高齢化率は25.1%を超え、過去最高となった。医療制度改革や高齢者医療制度の見直しが進められるなか、薬局・薬剤師はどう活路を見出し、存在価値を発揮していくべきか?日本薬剤師会会長の山本信夫先生にお話をいただいた。

調剤報酬改定に伴う、薬剤師・薬局の役割ということで、かなり大きな視点にはなりますが、調剤報酬改定で具体的にどんなことが変わり、それに対して薬剤師の方々はどのようにしていくべきかを今日はお話したいと思います。

地域包括ケアシステムにおける薬局の役割

わが国の人口は、現在およそ1億2千万人ですが、2055(平成67)年には8千万人台になるという推計があります。人口構造で見ると先進国の場合、子どもの数が少なく、高齢者が増加する傾向にありますが、日本はその変化が極めて早いことが危倶されています。

さらに言うと、日本の医療保険制度、社会保障制度は基本的に税金と保険料で賄われているわけですが、それらを支払うのは20歳から64歳くらいまでのいわゆる勤労世代です。2005年は勤労世代と65歳以上の人口の比率がおよそ3対1でしたが、2055年にはほぼ1対1に推移することが予測されています。

3人に1人というのは、騎馬戦のような格好で背負っているので、1人1人の負担は比較的楽なのですが、2055年はおんぶ、つまり1人の若者が1人の高齢者を背負う形になります。そのうえ日本人の認知症発症率が50%といわれている今、認知症の人が認知症を背負っていたり、認知症の人が元気なお年寄りを背負うというような状況にもなりかねません。子どもの数がなかなか増加しないまま、高齢者が40%を超えた場合、平均的な医療費は3倍ほど違ってきて、かなりシリアスな問題が発生することが目に見えています。

最近の医療費は、年に3%程度、額にすると1兆円ほど伸び続けているのが現状です。その原因は何かというと、高齢者が増えて罹患率が高くなると、必然的に1人が複数の疾病を持つようになる。健康で長生きできる環境が整うのは、国民としては望ましいことですが、一方で必要以上の医療費や処置に対する議論が、今後起きてくることが予測できます。

医療に関わる者からすると、過剰な診療は必要ないと思いますが、必要な診療まで絞られてしまうことにはやはり抵抗感があります。とはいえ医療提供側も、過剰な診療が起きないような環境を、薬剤師も含めてつくっていくことが急務であると考えています。

国としてもこの先、どのような仕組みをつくっていくかが大きな課題になっており、われわれなりにそれを読み解いてみると、坂を転がるようにそれぞれのステージで在宅サービスへ移行しようという動きがあります。坂の上のほうにある高度急性期医療については、数を限るのではなく、必要な方に必要なものが提供され、段階的に高度急性期から一般急性期、亜急性期へ移っていくような過程をつくっていこうということにほかならないのだと思います。

病床についても、以前からさまざまな議論があります。そもそも一般病床とは何かというと、1948(昭和23)年に医療法が制定されて以来、名前こそは「一般」となっていますが、実際は急性病床に相当するものです。つまり普段元気にしている方々が、何かしら問題が生じて入院せざるを得なくなって、入るところが一般病床。それをさらに進めたのが高度急性期と一般急性期と亜急性期になるのですが、ここでいう「急性」とは、長期療養を要する、あるいは医療施設、介護系の施設が関わってくるのが大きな特徴といえます。ただし入院医療の機能分化がなかなか進んでおらず、それについては常に議論が行われています。そこを機能分化すると、医療機関は急性期に特化した診療を提供し、その後は在宅へ移行していく。在宅の周りには、それを支える在宅療養支援診療所や在宅療養支援病院といった施設が存在します。さらに医療にプラスして介護を含めた総合的なシステムが必要となり、それに向けて進めるのが地域包括ケアシステムだと理解しております。

在宅医療は今の社会保険制度、医療保険制度、医療提供体制のなかでどういう形になっているのか。在宅と後発医薬品という、二つの大きな流れのなかで、薬剤師は医薬品を提供する立場として在宅医療とどうリンクしていくべきなのでしょう。

かつて地域包括ケアシステムという概念が初めて出てきたとき、それを図式化した資料を国が発表しました(図表1)。薬局はそのなかのどこにあるかというと、昔でいうところの一次医療圏、つまり小・中学校区レベルの人口1万人程度の圏域なので、往復1キロから2キロくらいの範囲に1軒ある程度です。先ほどの急性期から移ってくる在宅サービス、あるいは居住系や介護施設系も同範囲に存在し、さらに病院があり、この小・中学校区レベルが市区町村レベルになり、県になり、全国になり、それぞれとリンクしているというイメージです。考え方としては壮大ですし、こういった仕組みができれば大変よいと思います。

しかし現状は市区町村、都道府県関係なく、どこでも医療にかかることができる日本の医療のよい面が残っているので、それをある程度制限しながら、地域のなかをケアマネージャーがぐるぐる回っています。それぞれに専門家がいて、ケアマネージャーが調整しながら在宅拠点、医療拠点の整備をしているわけです。さらに訪問介護や在宅患者、さらに薬局もあり、現在は真ん中でケアマネージャーがコントロールをしている状態ですが、みんなで患者の面倒を見ようというのが2025年モデルの特徴です。

在宅患者に対する薬学的管理の課題に関しては、在宅患者は自宅から出られないという問題があります。外来患者は自分で歩いて来られますし、入院中の方々はベッドの中でいつでもケアが受けられる。しかし在宅だと、そばに医師も看護師も薬剤師も当然いません。在宅患者の薬学的管理指導を推進する際の課題として、薬局にマンパワーがないことが挙げられています。

さらに昼夜間わず日曜日も対応を求められるだけでなく、現在の在宅患者の何割かは、極めて高度な無菌設備を必要としています。なかでも薬局に薬剤師が少ないのが何よりの問題といえるのですが、現在、薬局はコンビニよりも数が多いといわれています。先ほどの地域包括ケアシステムの距離で考えてみても、薬局から在宅患者のお宅まで片道徒歩30分。お宅で30分過ごしたとして、1人の患者につき合計1時間半かかるわけです。その間、薬局に薬剤師がいないことになると、仕事が十分にできるとは考えにくい。在宅に行く以前に、薬局として十分なケアができるのかという疑問すら湧いてきます。その一方で、夜間や休日の調剤などの要求に薬剤師はどう対応していくかべきかを考える必要があると思います。

医薬分業制度の意味と薬剤師がすべきこと

医薬分業バッシングという言葉がありますが、世界中を見ても医薬分業をいらないと断言している国はおそらくないはずです。医と薬を分ける仕組みはまさに知恵であり、必要なこと。ですから制度そのものを否定されるのは、いささか納得のいかない部分があるのですが、われわれとしてもやはり医薬分業の制度とは何か、そのなかで薬剤師がすべきことは何かを原点にもう一度戻って考えてみる必要があります。

特にここ1、2年の医薬分業バッシングは、薬剤師不要論に近いほど厳しいものといえますが、私なりに反省点を考えてみました。

一つは、庶民感覚から見て大きくかけ離れた報酬をもらっているのは、客観的に極めて大きな問題と言わざるを得ません。その一方で、常識を超えた用地の買収が行われている。いまや地方行政は赤字の出る恐れがあったら、病院をつくって薬局を誘致すればお金を稼げるという風潮すらあります。しかも民間病院ならまだしも、県立や市立、国立病院までそういったことをやろうとしている。

コンビニ以上に早い店舗展開のスピードも問題です。また、医薬品提供体制を考えて経済効率が優先されてしまい、なるべく手聞をかけず、楽に仕事をしていると疑わざるを得ない状況も実際に存在します。

こういった現状を鑑みると、薬局は本当に社会の要請に応えているといえるでしょうか。ある地域では、魚屋さん、肉屋さん、八百屋さんなどは1軒ずつしかないのに、薬局は10軒もあるような異常な事態が起きています。私の近所には、一つの病院の周辺に薬局が13軒点在し、そこには病院へ行く道が13本あります。つまり病院からのすべての帰り道に薬局があるわけです。これはちょっと尋常ではない。

医薬分業制度の今後を考えれば、薬剤師が国民から信頼されるという当然のことを徹底しなければいけません。医療機関などの経済的要因で進んできた分業では、早晩衰退してしまうでしょう。同時に、医薬分業が伸びることは当たり前のことのように思っているのも問題です。事実、医薬分業の伸び率は2000年をピークに、かつてのような勢いはなくなっています。それを無視して、まだまだ伸ぴる前提で対応を考えてはいないでしょうか。

私が薬剤師になったのは医薬産業が1兆円を超えた時代で、診療報酬に占める調剤割合はわずかだったのですが、現在は調剤医療費がほぼ全体の2割に近づいています。そんななかで患者や国民に負担を求めるには、業務自体の必要性や価値、あるいはどの程度コストがかかるものなのかを、この先データやエビデンスとして提示していくことが課題といえます。

打開策を簡単に申し上げることはできませんが、薬局は地域医療への貢献、病院の薬剤師はチーム医療への貢献という課題が、それぞれに求められていると思います。

こうした大きな課題を抱えたなかでの2014(平成26)年度診療報酬等の改定(図表2)であったわけですが、論点を見ると、かかりつけ薬局の機能強化があります。あちこちの薬局に行くのではなく、決めたところで薬をもらう。さらにいえば、かつてのように薬がおまけではなく主役になれる部分も出てきましたので、そうした薬物治療の経過をどう観察してマネージメントしていくか。不要な薬を削ることも含めたマネージメントをして、良い療養環境をつくっていくことが基本的な方針だと認識しています。

そのうえで、在宅医療においても適切な薬物治療を提供する。入院、外来、在宅の三つに分けて考え、薬局に来られない方も同じように医療が受けられる体制を組まないと、地域医療は持たないというのが基本方針の意味するところだと思います。

お金を減らすという目的もあるので、ジェネリック医薬品をさらに促進する。これまでは使用割合の目標値が30%に定められていましたが、2018(平成30)年3月末までに60%にするという、ある意味途方もない数値が設定されています。

一方で、残薬の確認と医薬品の適正使用の推進も挙げられています。2007(平成19)年の調査で少し古いのですが、薬剤師が介入して患者の残薬を整理したところ、1年分にすると500億円ほどの無駄薬を節減できたというデータがあります。この場合の無駄薬というのは、不要な薬という意味ではなく、飲み残されて使われずに捨てられていく薬のことです。単純に薬を減らすだけではなく、のちのちかかる医療費も考慮するのは、薬剤師として大きく貢献できる部分といえます。

ただし患者は、薬をきちんと飲んでいるか、残薬はないかなど本当のことを言いたがらない傾向がありますので、それらにどう対処するかという課題もあります。

それから薬局のマネージメントの確保も重要です。処方箋通りにただ薬を渡すのではなく、パイタルサインを何のために見るのか、適正に薬を飲めばどうなるか、あるいは飲まなければどうなるのかを患者にきちんと伝える。こうしたことを踏まえて、本当に必要な薬だけを調剤していくことに、薬剤師の今後の存在価値が問われています。今回の改定はそういったことをにおわしている印象を受けます。

薬剤師の存在価値が認められるために

今回の改定で薬剤師が具体的に関わってくる部分として、在宅薬剤管理指導業務の一層の推進が挙げられます。具体的には、24時間調剤と在宅業務ができる体制の整備において、基準調剤加算の評価が見直されています。

とはいえ現場としては、24時間体制はそれなりに大変なことだと思います。とりわけ薬局業務は女性の多い職場ですから、そうしたことも考慮しながら整備をしていかなければいけません。さらに在宅医療における無菌製剤処理の推進、チーム医療の整備、お薬手帳を必ずしも必要としない患者には、薬剤服用歴管理指導料の評価を見直すというふうにもなっています。しかしこれは少々ややこしい表現でして、そもそもお薬手帳は、自分の治療記録なので、不必要な人はいないはずなのですが、ここでは誰が「必ずしも必要としない患者」に相当するのか。反面、お薬手帳を日常的に持ち歩いている人が少ないという問題も挙げられます。

2025年に向けて目指すべき薬剤師・薬局の姿は、図表3のようになると思います。「地域医療提供体制と薬局・薬剤師」という全体のなかで、受診をしたり相談に来る患者に対して、医薬品を一元的に管理する仕組みをつくり上げるのが薬局・薬剤師の役割となります。

これから先、持っている薬とそれに伴う情報、患者の手元に蓄えられた情報と、さまざまな調剤に関する情報を評価分析していくことで、必要な薬が適切に提供されることにつながるはずです。単に薬を提供するだけではMedicineになりません。

今言ったようなことを、今後の薬局・薬剤師のあるべき姿として目指して地域のなかで機能していければ、これから先も十分に薬剤師としての存在価値を認められ、薬局の機能も高まっていくように思います。

※この記事は2014年6月6日に開かれた「第5期医薬情報聡略研究会」(弊社主催)の内容をもとに構成したものです。

山本 信夫(やまもと のぶお)氏
公益社団法人日本薬剤師会会長。1973年東京薬科大学卒業。薬局勤務を経て、1998年日本薬剤師会常務理事、2006年間会副会長に就任。社会保障審議会医療部会委員、中央社会保険医療協議会委員、チーム医療の推進に関する検討会委員などを歴任。2012年公益社団法人東京都薬剤師会会長に就任。2014年6月から現職。

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