財務省の思惑通りに事態が進んだ調剤報酬改定
更なる大手門前薬局グループ包囲網
2018-04-12
処方料を無駄なコストとして捉える財務省のホンネ

最近、とかく世の中をお騒がせしている財務省。2017年10月25日に財務省は半年足らず先に実施される診療報酬・介護報酬ダブル改定を明らかに意識した「社会保障について」と題する報告書を公表しました。インターネットでも検索可能ですので、調剤薬局経営者の方々には、ぜひ読んで頂きたい内容です。今後の調剤報酬政策を占う意味では、中医協や厚生労働省の提言資料等よりも、遥かに核心を突いた内容が含まれています。

その中では調剤医療費を巡る多くの言及が目立ちますが、「2016年度改定での調剤報酬の適正化は不十分。大型門前薬局に係る調剤基本料の対象範囲を拡大し、(中略)規模に応じた収益性や処方せん集中率の差異を踏まえた段階的な報酬設定も考えられる」との記述に注目して下さい。今となって考えると、今回の調剤報酬改定では正に財務省の思惑通りに事態が進んでいることが分かります。

この他、「院外処方の場合は院内処方に比べて3倍超の技術料が算定される」、「調剤基本料、調剤料について薬局のどのような機能を評価して、院内処方と比べたコスト差が生じているのか明らかではない」との指摘もあります。要するに、財務省は処方料を、明らかに無駄なコストとして捉えていることが理解出来ます。

「調剤基本料・調剤料については、地域で“かかりつけ”機能を担っている薬局は適切に評価しつつ当該機能を果たしていない薬局の報酬水準は適正化させていくべき」との記述も見られます。

今改定で、前述・財務省の目指す方向性を具現化した改正として一番、分り易いのは「妥結率の低い保険薬局及び許可病床200床以上の病院における初診料、再診料及び調剤基本料等の減算の取り扱いの見直し」に係る部分です。


地域で利便性高い門前薬局が一定の貢献をしてきた事実

2016年度報酬改定で調剤基本料が1~5までの5段階に再編。「グループ全体での処方せん回数が4万回超の薬局グループに属する保険薬局」に対して、「特定の医療機関からの処方せん集中率95%超・特定の医療機関との間で不動産取引のある薬局」は特例的に引き下げられました。今改定では更に前述「95%ルールを85%に引き下げ」。この他、従来から未妥結に対して50%の減算措置が導入されていましたが、未妥結に加え単品単価契約率、一律値引き契約の状況等の定期報告も全薬局に義務付けられ、これらの報告がなされない場合には、50%に減算されることになりました。(図表1)

(図表1)


今改定では更に厳格化が進められ、調剤基本料が5段階から「1~3までの3段階に再編」。ただ、調剤基本料3は通常のイ・20点に加え下位ランクのロ・15点が追加され、イ・は「グループ全体の処方せん回数が月4万回超から40万回以下」を対象にし、ロ・は「グループ全体の処方せん回数が40万回超」の大手薬局グループを対象にするものです。ロ・の新設は明らかに全国展開する大手門前薬局チェーンをターゲットにしたものと考えるのが妥当です。この他、2016年から門内薬局(同一敷地内薬局)が一定の条件付きで認められるようになりましたが、「特定の医療機関との不動産取引の関係のある場合」の「特別調剤基本料」が設けられました。10点という最下位ランクの調剤基本料であり、未妥結や前述したような妥結状況等の報告が行なわれなかった場合は、5点という非常に低い点数しか算定することは出来ません。追い打ちをかけるように、「かかりつけ薬局として一定の実績」が認められた場合に特例措置(調剤基本料引き下げ)から除外するルールも、今改定から廃止されました、要するに、大手薬局グループに属する門前薬局には、様々な場面で“狙い撃ち”にされる事態を招いたのです。(図表2)

(図表2)

さて、前出・財務省の報告書・参考資料の中には、この他、興味深い資料が含まれていました。つまり、昨夏に幾つかの大手調剤薬局チェーン等で発覚した処方せん「付け替え」による不正請求問題の新聞報道等が引用されていたのです。通常、官庁の政策提言資料等で、個別企業のこうした事案に言及されるのは、非常に稀なケースです。

要するに、財務省は地域包括ケアシステムの中で活躍する「かかりつけ薬局=善」、特定の医療機関とマンツーマンの「大手門前薬局=悪」という印象操作を行っているようにも見えます。なぜ、同省は大手門前薬局をやり玉に上げるのか?

事情通によると、同省は全ての調剤薬局を国が規定する「かかりつけ薬局」に収斂させて、現在、全国に約5万9千件ある調剤薬局を2025年までに2万件程に絞りこみ、全ての調剤薬局機能を“かかりつけ薬局”に収斂。地域包括ケアの日常生活圏域に一つずつ位の割合で整備することを目指しているのです。大手グループに属する門前薬局を淘汰させるのが目的であれば、前述の印象操作の理由等も分ろうというものです。

ただ、患者の利便性を考えると基幹病院等の門前薬局が各地域で定着し、一定の貢献をしてきたことも疑いのない事実です。そのため、大手門前ではない小規模レベルの門前薬局を、いかに面分業の「かかりつけ薬局」に誘導していくのかが、今後の調剤薬局政策の重要なポイントになるでしょう。

財務省には政権中枢を「忖度」するのではなく、高齢化が進展する各地域の患者さんのことを「忖度」した政策提言を求めたいものです。とは言い過ぎでしょうか?

(医療ジャーナリスト:冨井 淑夫)

 

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