「健康サポート薬局」を目指した人事制度・教育システムの改革
薬局独自の認定制度で薬剤師の「働き方改革」
2017-11-28
2017年3月に開催された中医協の議論では、2016年の診療報酬改定で新設された「かかりつけ薬剤師指導料・同包括管理料」届出薬局数が、2017年2月段階で2万9,000件に達し、日本の調剤薬局全体(約5万8,000施設)の2分の1を超えたことが報告されました。

この結果は「かかりつけ薬局・薬剤師」を普及させたい厚生労働省の期待通りに進んでいると言えますが、2016年4月に制度がスタートし2016年10月から各都道府県で届出の始まった「健康サポート薬局」に関しては、2017年5月時点で約330件に留まっています。

全国各地で薬剤師不足が顕在化する中で、施設環境面で国が求める「健康サポート機能」を備えている薬局は一定数、存在はするものの、「所定の研修を修了し、薬局において薬剤師として5年以上の実務経験のある常駐薬剤師」の採用等、「常駐する薬剤師」要件の満たせない薬局施設が多いと推定されます。

また、一部の薬局経営者の中からは、「現状では“かかりつけ薬局”のような調剤報酬上の評価はない上に、各自治体に届け出る上で数多くの添付文書の準備等、煩雑な事務作業が発生する。日常業務が多忙な中で、敢えて届出を急ぐ理由はなく、経営的なメリットを見極めながら慎重に進めたい」との声も聞かれます。

都心部のM薬局グループは地域密着型の10数店舗を運営する中堅薬局グループですが、「かかりつけ機能」及び「健康サポート機能」に対応出来る薬剤師の採用・定着を進めるため、薬剤師の賃金制度の見直しを実施しました。

例えば、同薬局グループでは診療報酬改定が実施された2016年4月以降、「3年以上の薬局勤務経験」を前提に、「週32時間勤務」、「医療に係る地域活動への取り組み参加」等、診療報酬で規定された「かかりつけ」要件に当てはまる薬剤師に対して、「かかりつけ手当」を支給する取り組みを開始。更に、既に「健康サポート薬局」を届出したグループ内薬局に対しては、「かかりつけ」要件に加え、常駐可能で「5年以上の実務経験」を前提に、「地域住民による主体的な健康の維持・増進のサポート」が可能と判断した薬剤師へ「健康サポート手当」を支給することを検討しています。

要するに、「かかりつけ薬局」や「健康サポート薬局」で求められる役割を満たしている薬剤師と、そうではない薬剤師との間で、給与面で差を付けてやる気を出させる試みですが、「かかりつけ」手当を導入してから、個々の薬剤師のモラールは明らかに高まっているようです。

M薬局グループ社長のM氏は、「給与アップに繋がることもありますが、薬剤師一人ひとりが“かかりつけ薬局”、“健康サポート薬局”を運営する中で重要な役割を果たしていることを再確認出来ることが大きい。今後は、当薬局グループ独自の“かかりつけ薬剤師”や“健康サポート薬剤師”を育成する認定制度にして、新たな教育の仕組みを作っていきたいと考えています」と意欲的に語っています。

給与改革からスタートしましたが、長期的な視点で捉えると“かかりつけ薬剤師”や“健康サポート薬剤師”の体系的な教育システムを導入し、独自の資格認定制度として定着させたい考えです。今、流行りのキーワードを使うと、薬剤師の「働き方改革」と言えます。全国的に見ると某県薬剤師会のように独自の「セルフメディケーション支援薬局」認定制度を設けたり、福岡市のように「健康応援薬局宣言」を打ち出す等、自治体が「健康サポート薬局」普及の後押しをするような動きも顕在化しています。

「健康サポート薬局」は地域の健康づくりの拠点・情報発信基地であると共に、健康づくり施策のシンクタンクとしても、求められる役割は拡大していくのではないでしょうか。

(医療ジャーナリスト:冨井 淑夫)

 

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